ロックマンXセイヴァーT - 最終章 - 第七話
第七話

・・・・?
反射的に目を瞑ってしまったのか、視界は真っ暗だった。
確かに着弾した音がしたのに、一向に痛みを感じない。
浮遊感も無い。
いや・・もしかしたら、もう自分は死んでいるのだろうか?
脳もろとも一撃で粉砕されたため、痛みを感じなかったのかもしれない。
セイアは、ここが天国だろうが地獄だろうが、構わず、ゆっくりと眼を開いてみた。
飛び込んできたのは、天国や地獄など言う飾り気のある場所では無かった。
足元に転がった、焼け焦げた蒼い破片。
鉄を焦がしたような異臭が鼻をつく。
顔を上げると、映ったのは、両手を大きく広げ、自分の前に仁王立ちしている、自身の兄の姿だった。
「兄さ・・・?」
エックスは、一瞬フワリと頬笑むと、力無くその場に倒れ込んだ。
「兄さん・・?ねぇ・・・?兄さ・・・。」
倒れ込むように屈んで、兄の手を取った。
・・冷たかった・・。
「大丈夫か・・?セイ・・ア・・。」
「嫌だ・・嫌だよ・・。お兄ちゃん・・死んじゃ・・嫌だよ・・。」
「泣くな・・よ・・。お前・・は・・おれとゼロの・・弟・・だろう・・?
お前なら・・大丈夫・・だ・・。きっ・・と・・。お前なら・・。」
ドッと涙が溢れた。
もう何も考えられない・・。
言葉が浮かんでこなかった。
「セイア・・。良くきけよ・・?さっきも・・言った・・が・・、
お前は・・おれとゼロの弟・・だ・・。立派な・・な?」
「お兄ちゃん・・。」
「あまり・・一緒に暮らしてやれる時間はなかったけど・・。
お前は・・大切な・・弟だ・・。」
エックスの手が、優しくセイアの頬を包んだ。
愛しそうに目を細めるエックスの顔には、生気が無い。
「だから・・最後に・・一つだけ・・お願いが・・あるんだ・・。
あいつを・・ワイリーを止めて・・くれ・・。」
「そんな・・最後なんて・・言わな・・いでよ・・。」
「頼んだぞ・・。セイア・・いや・・ロックマン・セイヴァー・・。」
エックスは最後に、優しく頬笑んで、酷くゆっくりと眼を閉じた。
兄の手を握りしめても、頬を軽く触ってみても、何の反応も無かった。
触れている頬は、氷のように冷えきっている。
「あ・・・あぁ・・・。うぁぁぁぁぁぁ!!!」
兄の亡骸を抱き締めて、セイアは狂ったように泣き叫んだ。
閉じられた瞳は、もう二度と開かれない。
優しく包んでくれる、あの穏やかな声も発しない。
エックスは・・兄は死んだんだ。
死んだ・・?
違う・・。
だってエックスはレプリロイドだから・・。
人間を模して作られたロボットだから・・。
生きているわけではないから・・。
死んだんじゃない・・壊れただけだから・・。
でも・・・それでも・・。
それでも・・エックスは死んだんだ。
人間だとかレプリロイドだとかは関係なかった。
兄は自分を庇って死んだんだ・・。
「なんで!!?なんでお兄ちゃんが死ななきゃならないの!?なんで!!
なんで・・お兄ちゃんは何も悪くなんか無い・・そうでしょ・・。
なのに・・なんで・・。」
「死んだか・・。ふっ・・順番が変わってしまったかな・・?」
・・・!
「まぁいい・・死ぬのが数秒延びただけだ・・。」
こいつが・・。
「次は貴様だ!」
こいつが・・こいつが兄さんを殺したんだ。
セイアの中で、何かか弾けた。