ロックマンXセイヴァーT - 最終章 - 第四話
第四話
「っ・・・くっくっくっ・・やはりロックマン・エックス・・。抜け目が無いのぉ。」
一瞬にして煙が晴れた−と共に、中から老人の醜い笑い声が飛んできた。
セイアとてわかっていた。
いくらエックスの攻撃が凄まじいものだったとは言え、それだけでワイリー・カプセルのバリアを破り、
カプセルもろとも破壊できるなどと、出来すぎた話があるわけがない。
そして、予想通りに、エックスは大幅に体力を消費し、そのまま膝を突いた。
アーマーの各所から、白い煙が音を立てながら吹き出てくる。
過負荷《オーヴァー・ヒート》だ。
「くっ・・!」
セイアは再び肩のサーベルを抜き放ち、正面に構えた。
三00gのサーベルの柄が、十kg以上の重さに感じられる。
一瞬、視界が霞んだ。
恐らく、全世界の全ての医師に言わせても、『これ以上の戦闘は命に関わる』と口を揃えるだろう。
「ロックマン・エックス・・。一気に止めは刺さん。
ジワジワと地獄の苦しみを味わってからあの世に言ってもらおうか。」
数秒のための後、ドッヂ・ボール程の大きさのエネルギー弾が、カプセルの下部の銃口から放たれた。
エックスの体力はもう限界だ。
これを躱すことはまず出来ないだろう。
「兄さぁぁん!!」
叫んだときには、もう遅かった。
エネルギーの直撃を喰らい、エックスは悲鳴を上げる時間すらなく、その身体を投げ出されていた。
「貴様ぁ!!」
「くっくっく・・しぶといな・・。まだ微かに生きているようだ・・。
ふっ・・まぁいい・・・ロックマン・セイヴァー。次は貴様を瀕死状態にし、
それから仲良くとどめをさしてやろう。天国の一人旅は寂しいだろう?」
「許さねぇぇ!!」
怒りに身を任せ、セイアはワイリー・カプセルに飛びかかった。
サーベルを展開させ、その蛍光色の刃で、カプセルを包み込んでいたバリアを斬り付けると、
薄いエネルギーの膜は、先程の強固さを忘れさせるほど、いとも簡単に粉砕された。
セイアのサーベルは、そのまま勢いを緩めず、とっさに回避したワイリー・カプセルの、
下部の銃口を斬り落とした。
「なにぃぃぃぃ!?まっ・・・まさか・・!」
着地すると共に、隙を見せずに光剣を構えなおすと、ワイリーは酷く混乱したように声を上げた。
よく見ると、カプセルに設置されている、バリアの展開装置と思われる機器に、
大きく亀裂が入り、そこからスパークを放っていた。
恐らく、先程のエックスのバスターの出力に耐えきれず、内側から破壊されたのだろうと、
セイアは見当をつけていた。
勝てる。
一番の問題は、あの強力なバリアだった。
それさえ打ち砕いてしまえば、あとはダメージを積み、一気にバスターで撃ち抜いてしまえばいい。
横目で兄の姿を確認すると、メットが粉々になっていたが、なんとか壁にもたれかかるように、
エックスは立ち上がっていた。
しかし、重体なのに違いはない。
早々にワイリーを倒し、エックスを連れて脱出しなければならない。
いつから僕は・・こんなに冷静に物事を判断できるようになったのだろう・・?
つい先日まで、泣き虫で意気地なしだった僕が・・。
セイアは頭の中で、そう自分自身に問うた。
「くっくっく・・予想外じゃったよ・・。貴様等の力を甘く見すぎていたようじゃ。
しかし・・やはり最後に勝つのはワシじゃ!!」
セイアは右手で、自分の両目を擦ってみた。
なにか、ワイリー・カプセルの後の景色が、そのまま透けて見えたような気がした。
しかし、何度擦ってみても、その現象は元に戻ろうとしなかった。
いや、それどころか、既に肉眼で、そこにカプセルが“存在している”事を確認するのが精一杯だった。
「・・・・!?」
違う。自分の異常ではない。
本当に”消えている”のだ。
ワイリー・カプセルの姿が、陽炎の様に。
「なにっ・・ど・・どこ!?」
辺りを見回すと、突然後方から、電撃を帯びたエネルギー弾で狙撃された。