ロックマンXセイヴァーT - 最終章 - 第三話
第三話

二発目のチャ−ジ。
持てる最大限の力をバスタ−に込める。
先程よりも一回り大きい閃光が、セイアのバスタ−に宿っていく。
しかし、その銃口が向いた先は、ワイリ−・カプセルではなかった。
「こうなったら・・。」
身体の向きを180度回転させ、部屋の隅にバスタ−を向ける。
「本体狙いだ!!!」
放たれた閃光。
狙った先には、液体で満たされた小さなカプセルがあった。
そう、ワイリーの脳が保存されているカプセル。
寸分の狂い無く放たれた、蒼と紅の閃光は、カプセルに直撃する瞬間、
八方に拡散し、その場で消滅した。
「っ!!?」
「ぐはははは!ワシがそんな重要なポイントに、手を打っておかないと思ったか!?」
「・・・電刃χ!!」
肩のサーベルを抜き、蛍光色のエネルギーを投げつけるが、
結果はやはり変わらなかった。
直撃の寸前で拡散したエネルギーは、力無く消滅する。
既に二発目のショットを放ってしまった。
−−もう・・バスターは使えない・・。
サーベルや特種武器なら、体外のエネルギーを使用している為、問題ないのだが、
バスターは自身のアーマーのエネルギーを、直接供給して放つため、
威力・一撃必殺性共に高いのだが、こういう状態では、使用に限りが出てしまう。
しかし、あのワイリー・カプセルの装甲を、完全に貫ける武器は、
セイアは今、バスターしか持ち合わせていなかった。
「どうした?もう来ないのか?それとも・・・エネルギーを使い果たしたか?」
低い笑い声が響く中、カプセルの前部に強力な凍結弾が収束し始めた。
ワイリー・マシン時の凍結弾を、更に三倍にしたような巨大な氷の塊は、
セイアが回避体制をとる前に、既に放たれていた。
回避しようと、身を翻そうとした瞬間、目の前で凍結弾が消滅した。
原因は、横から現れた灼熱弾。高出力の炎の弾が、凍結弾を消滅させたのだ。
「兄さん・・!!」
「喰らえ!!ワイリーぃぃぃぃ!!!」
セイアの目に映ったのは、黄金に輝く両腕に、エネルギーを充填していたエックスの姿だった。
この姿には見覚えがある。
サード・アーマーに、ハイパー・チップと呼ばれる特殊装備をする事によって、
一時的に全ての性能を引き上げる荒技。
しかし、それはエイリアの復元によって贋作したアーマーとチップ。
その為、本当に一時的にしか性能を引き上げる事が出来ないと、エックスは言っていた。
そして、大幅なエネルギー消費は避けられないとも。
今の状態で、クロス・チャ−ジ・ショットを放てば、間違いなくエックスの全エネルギーは尽きる事になる。
「なっ・・・待って!」
「行けぇぇぇぇ!!」
制止するセイアの言葉を押しのけ、エックスは両腕から凄まじいまでのエネルギーを放った。
同時に発射された二発のエネルギー弾は、空中で共鳴し、更に出力を増した一つとなって、
ワイリー・カプセルに炸裂した。
途端に土煙が上がる。
エックスは予想通りエネルギーを失ったのか、その場に膝を突き、荒い息をしている。
セイアは巻き上がる土煙に目を細めながらも、必死にその中のカプセルを目で追っていた。