ロックマンXセイヴァーT - 最終章 - 第十四話
第十四話

少しガラリとした部屋を、隅々にまで見渡した後、セイアは「よし」と手を叩いた。
足元に転がっている鞄を背負い上げ、胸元のボタンを留めると、
自室のカギを閉めた。
手首の腕時計を確認すると、既に予想していた時刻を大幅に過ぎていた。
「やばい!遅刻だぁぁぁ!!」
セイアはいつもよりも駆け足で、勢いよくハンター・ベースを飛び出していった。
廊下の途中で擦れ違った、エイリアとシグナスに、
「エイリアさん、シグナス総監。おはようございます!
あぁ・・えっと・・学校行ってきます!」
ペコリと頭を下げて、再び足の回転を早めた。
エイリアは、三年前には考えられなかったほど、穏やかな笑顔で、走り去っていくセイアを見送った。
「気をつけて行ってくるのよ。」
聞える素振りすら見せずに、他の隊員に激突してしまったセイアに、
エイリアはクスッと笑みをこぼした。
「良かった・・。思ったよりも元気そうじゃないか・・。」
「そうね・・シグナス。流石、エックスとゼロの弟って所よね。
でも・・やっぱり、時々一人で泣いてるみたい・・。」
「やはり、もう少し学校も休ませるべきか?」
「大丈夫よ。あの子・・もう一回、学校に行ける日を、すごく楽しみにしてたし・・。
それに今ごろ・・遅刻だって騒いでるのに、エックスに会いに行ってるんじゃない?」

ベースから、少しだけ離れた、慰魂場に、セイアは立っていた。
この広い慰魂場には、殉職したハンター達の亡骸が、静かに眠っている。
セイアはその中でも、一際目を引く墓石に、ゆっくりと足を進めた。
「兄さん・・久しぶり。ごめんね・・最近、忙しくなっちゃって、なかなかこれなくて・・。
あっ・・そうだ。聞いてよ・・今日からまた、学校行けることになったんだよ・・。
大分休んじゃったから、勉強わかんなくなっちゃうかも・・。
でも大丈夫。兄さんが入れてくれた学校は・・きっと卒業してみせる。」
セイアは、静かに『ROCKMAN=X』と彫られた墓石に、手を合わせた。
数秒の後、目を開けて、時刻を確認する。
「あっ!まずい・・完全に遅刻しちゃう。じゃ・・行ってくるね!
また明日・・。」
最後まで言い終わらない内に、セイアは地面を蹴っていた。
途中で落としてしまった鞄を、すぐに拾い上げると、猛スピードで東へ向かう。
時計の時刻は、8:20を示していた。
始業のチャイムは、8:25に鳴る予定だ。
「遅刻だぁぁぁ!!!」