ロックマンXセイヴァーT - 最終章 - 第十二話
第十二話
無機質な音が響く、ただっ広い研究室の中、
ゼロはレプリロイドの科学者と、向かい合う形で立っていた。
先日の闘いで、使い物にならないほど大破していたアーマーは、今は見る影も無く、
もとの紅い輝きを取り戻していた。
「う〜ん・・。これを取り除くには、相当の時間を費やしますね・・。
そして・・今の最新技術でも、成功するかどうか・・怪しいところです。」
科学者は、手に持った紙幣に、サラサラとペンを走らせた。
ゼロはそれを聞いても、眉一つ動かさずに、顔を上げた科学者に、決意の灯った瞳を向けた。
「余計なお世話かもしれませんが、この先大きな事件でも起こった時、
あなた抜きで対処できるでしょうか?かのロックマン・エックスも先の闘いで・・。
それに・・今の貴方なら、そのままでも問題ないはず・・?」
「フッ・・大丈夫さ。今のイレギュラー・ハンターには、オレやエックスなんかよりも、
もっともっと優秀なやつがいるさ。オレ達の・・最高の弟がな・・。」
ゼロは、少しの微笑を浮かべた後、片手で自身の頭部を掴んだ。
「怖いんだ・・。オレ自身が平和の障害になってしまうんじゃ無いだろうかって・・。
アイツの望んだ平和な世界を・・この手で壊してしまうんじゃないかって・・。
・・セイアにまた・・救いようのない悲しみを与えてしまうんじゃないだろうかって・・。」
いつも笑っていたアイリス。
最後に約束を交わし、自分の腕の中で死んでいったアイリス。
自分よりも、もっともっと強い・・なのに、硝子細工の様に繊細で傷つきやすい弟。
自分の味わった悲しみを、弟に・・セイアに味わせたくなかった。
あの無邪気な笑顔に・・これ以上、亀裂を走らせたくなかった。
もう・・これ以上・・。
「・・わかりました・・。あなたの身体構造は、あなたを修理した時、大体は把握してあります。
貴方がそこまで言うのなら、やりましょう・・。」
「すまない・・。」
コイツと会話するときは・・いつもこんな調子だ・・。
ゼロは思った。
最初に会った、あの時だってそうだった。
ユーラシア墜落事件。
ギガ粒子袍『エニグマ』の作戦も失敗し、残るは、スペ−ス・シャトルを直接コロニーにぶつけ、
諸とも爆破する・・。と言う、方法だけだった。
気がついたら、ゼロはシャトルのコックピットに座っていた。
親友をいかせるワケにはいかない。
そして、こんな無謀な作戦をこなせるハンターは、自分とエックスだけだったから。
作戦は成功した。
粉々に砕け散るコロニーに、皆が歓喜の声を上げていたのは、聞かなくてもわかっていた。
しかし・・不覚だった。
一瞬の油断で、ゼロはコロニーの破片に呑み込まれてしまったのだ。
持ち前の操縦技術で、なんとか抜け出し、地球に帰還したものの、
全身にコロニーとドッキングしたΣウィルスを浴びてしまった。