ロックマンXセイヴァーT - 最終章 - 第十話
第十話

突発的に、洞くつ全体を激しい振動が襲った。
余りにも激しすぎた激闘。
つまり、エックスとセイアとワイリーの闘いが、洞窟を崩壊させ始めたのだ。
もう泣いている時間は無い。
セイアは直ぐ様、エックスの亡骸を抱え込むと、自分達が入ってきた巨大な扉を、ゼット・セイバーで斬り裂き、
そのまま出口に向かって走った。
ハッキリ言って、出口までの道順など覚えてはいなかった。
ただ、ただガムシャラに足を進めた。


ようやく光が見えた。
出口だ・・!!
しかし、セイアがほんの少しだけ安堵を覚えた瞬間、目の前を再び暗闇が支配した。
落盤が発生したのだ。
バスターで一気に活路を開きたいところだが、既にそんな事の出来る余裕は無かった。
頼みの綱のゼット・セイバーにも亀裂が走り、何度展開させようとしても、全く反応を示さない。
「そんな・・嘘だ・・くそぉ!!」
兄さん・・。
抱えていたエックスの亡骸を抱き締めて、セイアは壁に身を預けた。
折角・・みんなの所へ帰れると思ったのに・・。
それさえも敵わない・・。
いつの間にか、セイアはまた、涙を流していた。
帰りたい・・。
みんなの所へ・・。
「落鳳破!!」
「えっ・・?」
突然、目の前の土砂が、一気に拡散した。
再び光が覗く。
そして、その逆光の中、一人の青年が立っていることが確認できた。
「馬鹿野郎!!何してる!また生き埋めにされるぞ!今度はもう助けられる余裕なんかないんだ。
早くしろ!!」
「ゼロ・・兄さん・・!」
セイアは一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐに顔を引き締め、重い身体をもう一度だけ立ち上がらせた。

茜色の空が眩しい。
セイアはその眩しさに、少しだけ目を細めた。
涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。
帰ってきたと言う実感と、やはり兄は死んだと言う実感が、再びセイアを襲った。
隣のゼロを見る。
傷だらけだった。
メットも無くなっていて、その特徴的な金の長髪を纏めていた布も、もう無かった。
いつも兄に聞かされていた、もう一人の兄の姿が、今・・目の前にある。
あまり親近感は沸かないけれど・・。
兄のように、極端に懐く気にもなれないけれど・・。
やっぱりこの人は、自分の兄なんだ。
それを思うと、何故だか奇妙な安心感を得た。
まだ・・いる。
まだ、自分には支えてくれる存在が居るんだ。