ロックマンXセイヴァーT - 第参章 - 第九話
第九話
針のように鋭く、素早いチャ−ジ・ショットは、ワイリ−・マシンの装甲を撃ち抜くことは無かった。
着弾する寸前、ワイリ−・マシンの展開したバリアが、いとも簡単にバスタ−を弾き返したからだ。
セイアが続けて、スト−ム・トルネ−ドを放ったが、やはり直撃する寸前、拡散し、消滅した。
「フハハハ!!貴様等のパワ−程度で、このバリアが破られるか!」
マシンの上部に搭載されているマイクから、勝ち誇ったようなワイリ−の声が響く。
「なら・・これはどうだ!」
エックスの白い鎧は蒼い光に包まれ、次の瞬間には、滑らかな外装の黒い鎧に姿を変えていた。
忍者の様な外見に、フェイス・マスク。
そして、今まで蛍光色だったゼット・セイバ−が、その出力を大幅に増し、
黄金の光剣へと姿を変えた。
エックスが地面を蹴った。
セイアには、その姿が掻き消えたように見えた。
「えっ?」
「なんじゃと!?」
「円月輪!!」
エックスが出現したのは、ワイリ−・マシンの上部。
エックスは、瞬間的に跳躍し、天井に張りついていたのだ。
降下様に、エックスが振り下ろした黄金の光剣は、
容赦無くワイリ−・マシンのバリアを斬り付けた。
破れてはいない。
しかし、ほんの刹那の間、ワイリ−・マシンのバリアはグニャリと歪んだ。
セイアはそこを見逃さなかった。
「いっけぇぇぇ!!」
バチバチとプラズマを帯びたエネルギ−弾が、
歪んだバリアを突き抜け、マシン本体に撃ち込まれた。
直撃。
しかし、装甲が厚いため、ダメ−ジの程は全くと言っていいほど無かった。
「ふん・・やりおるわ・・。これはどうじゃ!」
「なっ・・?冷たい・・。」
ワイリ−・マシンの放つ、確かな冷気を、セイアは察知していた。
ワイリ−・マシンの周りの空気が、瞬時に冷やされている。
学校の理科の時間で習った、水分が凍結する温度は、確か零度だったから・・。
いや・・今感じる、この冷気は、零度なんて生暖かい温度では無い。
「気をつけろ!来る・・!!」
エックスが叫んだ瞬間、待っていたかのように、ワイリ−・マシンを周りを、
大量の氷弾が取り囲んだ。
二人がそれを確認した瞬間には、それは既に放たれていた。
「うぉぉぉぉ!!」
エックスは円月輪。
セイアはプラズマチャ−ジ・ショットで、氷弾を消しにかかるが、
その余りの量に、相殺しきることが出来ず、数発の氷弾が、二人の身体に撃ち込まれた。
飛び散る鮮血すら、その氷弾によって凝結し、塊となって床に転げ落ちる。
そして、セイアとエックスのア−マ−の持つ熱によって、
一瞬にして氷弾は溶け、辺り一面を水蒸気が満たした。
これでは視界が悪い。
エックスもセイアも、大したダメ−ジは受けていないが、これでは敵の動きを捕えることが出来ない。
無論、ワイリ−・マシンに赤外線スコ−プなどが搭載されていることは、
セイアでさえ察しがついた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぬっ!?」
突然の咆哮。
それと共に、満たされた蒸気が、少しずつ歪み始めた。
そして、次の瞬間蒸気が晴れた。
現れたのは、目一杯のエネルギ−をバスタ−に込めた、セイアの姿だった。
放たれたプラズマチャ−ジ・ショットは、正確極まりない射撃ではあった。
しかし、やはり直撃の寸前、先程のバリアに弾かれた。
「ハァ・・ハァ・・。」
「ゼロとエックスの力を合わせ持つ・・ロックマン・セイヴァ−。
ふん・・ROCKMAN特有の諦めの悪さじゃの。じゃがな!!」
次に放たれたのは、先程の氷弾から一変し、灼熱の炎弾だった。
色から察するに、第三次シグマ大戦時に、シグマが放っていた炎など、足元にも及ばない火力だ。
「セイア、伏せろ!」
直ぐ様セイアを伏せさせ、炎弾に向けてバスターを向ける。
エックスを包む鎧は、既に先程のシャド−・ア−マ−では無かった。
白を基調としたカラ−リングの、エックスが第三次シグマ大戦時に使用した、
通称サ−ド・ア−マ−。
以前、エックスが破棄した残骸を、エイリアとゲイトが解析し、
フォ−ス・ア−マ−同様、完全ではないにしろ、復活させたものだ。
「フロスト・シ−ルド!!」
放ったのは、絶対零度の氷によって作られた、氷のミサイル。