ロックマンXセイヴァーT - 第弐章 - 第十六話
第十六話

「ハァ・・ハァ・・勝った・・!!」
ガクッと膝を突く。
すると、今までセイアを包んでいたオ−ラと共に、
レ−ザ−・ブレ−ドはその姿を消した。
だが、休んでなどいられないことは、
セイア自身がよく分かっている。
ヨロヨロと立ち上がり、
未だコ−ドに捕らわれているエックスに歩み寄っていく。
「兄さ・・今・・助け・・。」
「セイア・・すまない・・。」
セイアは、多少乱暴にコ−ドを素手で引きちぎった。
転げ落ちたエックスは、ハァハァと息を整えながら、
ゆっくりと立ち上がった。
「ハァ・・ハァ・・セイア・・すまない。ありがとう。
・・・・助かった。」
エックスはそう言ってニッコリと笑った。
「う・・ん・・ぅ・・。」
エックスの笑みを見て、何故だか涙が溢れてしまう。
そして、流れる涙を拭おうともせず、
エックスの胸に顔を埋めた。
「う・・兄さ・・僕・・。」
涙のせいで声が掠れ、うまく喋ることが出来ない。
「あぁ・・わかった・・。怖かったろ?
ごめんな・・。」
エックスは、泣きじゃくる弟をただただ抱き締めるだけだった。

数分後
ようやくセイアは落ち着きを取り戻した。
エックスにVAVAとの戦闘の一部始終を話すと、
「そうか・・やっぱりVAVAだったか・・。
そして黒いゼロ・・やっぱり何かあるな・・。」
「うん・・。」
「セイア。お前は帰れ・・俺は全てのケリをつけてから帰る。」
そう言い、部屋の隅にある扉を指さしたエックス。
その扉には、先程のモノと同じ、
”W”の文字が無造作にペイントされている。
「なっ・・また兄さん一人で行くって言うの?
嫌だ!そんなの・・。嫌だよ・・
また・・一人になるなんて・・。」
そう言ってセイアは俯いた。
やはり寂しかったのだろうか?
それを見たエックスの表情は、一瞬だけ緩んだ。
しかし、
「ありがとな?セイア。
けど駄目だ。さっきまでの闘いで随分ダメ−ジがあるだろう?
そんな身体で何が出来る?おとなしく帰るんだ。」
困ったような表情で、セイアの肩に手を置くエックス。
これ以上弟を巻き込むわけにはいかない。
エックスの目は、そう言っているような気がした。
「ガ・・カガ・・・セイア?聞える・・?」
「えっ?」
突然のノイズ混じりの通信。
そりれは紛れなく、エイリアからの通信だった。
セイアは、通信機が搭載されているメットの耳部を、
軽く手で抑えた。
「あっ・・はい。こちらロックマン・セイヴァ−。
エイリアさんですか?」
「ガ・・良かった。通信繋げるの苦労したのよ?
それで?エックスは救出出来たの?」
「こちらエックス。エイリアか?
大丈夫。俺は無事だ。セイアのお蔭でな。」
大分焦っているエイリアの様子に、苦笑しながらエックスは答えた。
「良かった・・さ、早く帰還して?みんな心配してるわよ?」
それを聞いたエックスは、フッと寂しそうな笑みを浮かべた。
「エイリア・・すまない。俺にはまだ任務が残ってる。
先らセイアを還すから・・。こいつ、大分ダメ−ジが大きい。」
「まだ闘うつもりなの?」
「あぁ。」
「だったら、セイアの連れていけばいいじゃない。
この子、あなたが思っている以上に強い子だから。」
それを聞いたセイアは、エックスに「してやったり」と言ったような笑みを向けた。
「でも・・ダメ−ジがデカい。」
「あら?それなら心配無いわよ。」
笑ったようなエイリアの声。
それと同時に、セイアの身体を蒼い光が包み込んだ。
そして、光が晴れると、そこには大破したブレ−ド・ア−マ−に代わって、
新たに純白のア−マ−が搭載されていた。
「フォ−ス・ア−マ−・・?」
「そう。壊れたなら換えればいいでしょ?
感じはどう?セイア。」
「わぁ・・なんだか凄くしっくりきてます。」
見慣れないア−マ−に、目を輝かせながら、
セイアは笑顔でそう返した。
「そう?これでも駄目かしら?エックス。」
「う・・ん・・仕方ないな・・。」
「・・クスッ。だって、セイア。」
「うん!」
エックスはやれやれと両手を上げた。
この頑固さは・・どっちに似たんだろう?
「よし!行くぞ、セイア・・
いや・・第十七精鋭部隊隊員、ロックマン・セイヴァ−!」
「了解!隊長!!」
エイリアは、その会話をきき、
再びクスリと笑うと、ゆっくり通信を切断した。

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