ロックマンゼロ 忘却の悲史 - 第七章
 金属と金属がぶつかりあう音ともに、あたりに火花が散った。
間一髪、ゼロは素早くゼットセイバーを引き抜き、サイバーエルフの斬撃を防御していた。
 二人はおなじ姿勢で相手を睨み合いながら、交差している二つの剣をガチガチと震わせている。
 サイバーエルフは無言のまま素早く剣をさげると、ふたたび閃光のような速さで剣を振った。
ゼロの剣に、二度のつよい衝撃が走った。
 油断し、あまりにも力が強く、相手の斬撃の衝動でゼロは二、三歩足を下がった。
 ゼロは体勢をととのえ、先を見据えた。
 サイバーエルフは軽蔑と怒りを合わせたような目を向けていた。
 ゼロは高速でサイバーエルフに接近し、力を込めて思い切りに剣を振る。
 サイバーエルフは広い空中へ跳躍し、軽々と攻撃をよけた。

そこが狙い目だった。
 ゼロは「剣を降る」力を溜め、ゼットセイバーを両手で持ち合った。
 力が溜まると、真後ろある大広間の壁へ跳躍して飛びつき、さらにその壁を蹴って空中に静止しているサイバーエルフに急接近した。
「ハァッ!」
 ゼロは相手を空中から叩き落すように、強力なゼットセイバーの斬撃を放った。
ドゴン!! 硬いものが粉々に砕けるような音が発せられ、サイバーエルフは煙を舞い上がらせながら地面に激突した。
 対するゼロは地面に降り立ち、剣を下げてもくもくと上がる煙を見ていた。
 ―― 一体どういうことだ?
ゼロは、電子体で、実体を持たないはずの、そのサイバーエルフと剣を交えたことが、信じられなかった。
 だが、あれから感じ取った奇妙な感覚は、サイバーエルフそのものだった。
――しかし勘でそういっても、現実で実体を持つサイバーエルフなどいるはずがなかった。
 ゼロは煙から地面へと目を落とした。

 その瞬間、とつぜん煙から細長い線が飛び出してきた。
 ゼロは反射的に「レーザー」を避けようとしたが、ゼットセイバーの刃をかすめ、線とともに剣は遠くの地面に落ちた。
 そのまま地面をころがって体勢をととのえたゼロは、目を見張った。
目を上げた瞬間、そこには無数のレーザーがゼロにむかって飛び込んでくるところだった。――速過ぎる――。
 片手をついて地面から跳躍して離れ、ゼロ攻撃を避けた。
だが、地面に激突したレーザーとは別に、地面すれすれでゼロを追尾したレーザーが、とびかかってくる。
 天井までに跳躍したゼロは、そこで足をつき、方向を転換させてすばやく別の地面に降りたった。
 さきほどゼロを追ったレーザーは天井に激突し、煙を舞いさせた。
 そのとき、またも数発のレーザーが天井の煙から現れた。
「・・・!」
 ゼロは着地したばかりの崩した体勢を無理に動かし、攻撃を回避した。
 ――全てが一瞬だった。
地面を転がってひざまずいたゼロは、片手で腿を押さえていた。
 なんとか急所へのレーザーの直撃は避けれたものの、避けざまに一発が片脚の腿を貫いた。
 ゼロは痛みをものともしない顔でいたが、傷からは真赤な血――オイル――が流れている。

 ・・・これでは次の攻撃が入れば避け切れない――ゼロはそう思い、苦虫を噛み潰したような顔をした。
 同時に、地上の砂煙が薄れはじめ、サイバーエルフがゆっくりと立ち上がりはじめた