ロックマンゼロ 忘却の悲史 - 第三章
 通信でオペレーターに連絡すると、ゼロはふたたび現場にちかづいていった。
 反応があった残骸のところまでくるとゼロは不可解なことに気付いた。
残骸が円を描いている地面であるところに、巨大な穴がある。まるでクレーターのようだ。
 それをどうやってこんなふうに空けたかとされる要因が見つからない。
 例えば雷の落下などの焼け跡や掘りだした跡――。
この穴の地肌はツルツルだった。

 その時、周囲の残骸のひとつがビクリとうごめいた。
ゼロはすかさず足を急がせ、その残骸のほうへと向かう。
 目的地へと着いたゼロは残骸のなかに埋もれる不可解なものを見つけた。
右手足がなく、全身が大破したパンテオンがうつむけに倒れているのだ。
顔面を地面にむけたまま、ボロボロの左手を残骸をかきわけるようにぴくぴくと動かし、空で空振りしている。
 見様によっては手招きしているように見える。
「・・・・・・シエル、破損したネオ・アルカディア軍のレプリロイドを確認した。周囲に生存反応を探知したら連絡をしてくれ」

 ゼロが他の所へと移動しようと振り返ろうとした。
その瞬間、大破したパンテオンがうつむいた顔を上にあげ、ゼロと視線をかわす姿勢になった。
 パンテオンはスローモーションのような動きで、ぼろぼろの左手でゼロの背後を指し出した。
 そして束の間、ガクッと左手を下ろし、それっきり動かなくなった。
「・・・?」
 すかさず、ゼロはパンテンオンが差した方向をふりむく。
――だがそこには星空だけの景色がひろがっているだけだった。
「ゼロ、もうこの周辺には生きているレプリロイドはいないみたい。後は私達が調べるから、ベースに戻ってきて」
 突然、シエルから通信がはいり、ゼロはハッと我に還った。
「・・・・・・了解した。これより帰還する」

 そう返事すると、しばらく間が空き、だんだんと白い視界が浮かんでくる。
 ゼロはふたたび白い空間へとんでいった。