ロックマンゼロ 忘却の悲史 - 第二章
 数分後、ゼロはレジスタンスベースの四階にあたる「司令室」に着いた。
ベースの内部は外とちがい、目に白むような明るさを放っている。
 鉄製の床を音をたてながら走り、司令室の中央にいるシエルにかけよった。
「・・・なにがあった?」
 ゼロはシエルに向って言った。
中央部にいたシエルも二、三歩あしをすすめる。
「急に呼びだしてすまないんだけど・・・これから緊急で、あるところへ行ってほしいの」
 シエルはくぐもった声で言った。
「数分前、強力なエネルギー反応がここからはなれた乾地地帯に確認されたの。反応はすぐ消えてたけど、そこからネオ・アルカディアのレプリロイドを探知したわ」
 ゼロは司令室の壁に設置されている巨大なモニターに目をうつした。
濃い緑色の背景にうつしだされたひとつの点から、放射状の波が広がっている。
「なにかネオ・アルカディアの強大な兵器のものと考えられるから、その地帯へ偵察にいってほしいの」
「・・・わかった。途中で何か情報がはいったら、すぐに知らせてくれ」
 ゼロは中央に位置する転送パネルに寄った。
「それでは、転送を開始します」
 と、「司令席」のオペレーターが言った。
司令席は司令室の左右それぞれに配置されているもので、そこからオペレーターが任務の指示を出したりなどをする。
 オペレーターがキーを押しはじめ、間をおいて、機械類が作動する音響がひびきわたった。
 司令室の電気系統がしだいに点滅し、どうじにゼロの真下の転送パネルもひかりはじめる。
ふいに自分の周りがモヤのようなものが現れ、とつじょ白い空間となって体をつつみ、意識が遠のいた。

 ――気づいた時にはまた荒地の光景を目にすることだろう。
ゼロはなにくわぬ表情でパネル上から消えていった